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秋月
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39
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女性
誕生日:
1984/09/27
職業:
介護士
自己紹介:
日々のらりくらり生きてます。
介護士をさせていただいてますが、
正直"介護士(仮)"くらいかも。

詳しくはこちら参照で。
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日常の切端やぼやき。独り言。そんな徒然。
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見つけたのでちょっと載せてみる。




汗ばんだ手を、それでも離したくはない。

「 薄氷 」

叶うはずのない恋が叶って、ずっと憧れてたあなたの横を歩いてる。
そんな幸せな日々が、愛しくて、ほんの少し、怖くて。
繋ぎとめるように、焼け付くような日差しの下で繋いだ手。

 

日が半分ほど傾いて、やわらいだ日差し。
それでもなお突き刺さる太陽は、
手に持ったアイスをゆっくりと溶かしていく。
コーンを伝い落ちるチョコレートの雫。
ところどころに浮かぶ、チョコチップの島。
水没しそうなそれを舐めとって、斜め上を盗み見る。
やや必死に見える横顔。
太陽光と、その影響で次第にその形を崩しつつあるアイスのせいだろう。
白とピンクのマーブル模様を舐めとる仕草の子どもっぽさに、
わたしはほんの少しだけ笑った。
僅かに揺れた空気を感じたのか、視線だけで

「(何?)」

と問われる。

「なんでもない」

持ち上がりそうになる口角を押さえながら、首を振って。
納得してなさそうな顔で、それでもアイスとの戦いに戻った彼が、
何故か眩しく感じられた。
太陽は既に色を変えようとし始めているのに。

 

いつだって、このポジションに憧れていた。
斜め後ろではなく、斜め前でもなく。
あなたと同じ位置で、肩を並べて歩ける場所に。
そこへいきたいと、焦がれていた。
それと同じくらい、いつだって、このポジションを恐れていた。
知らない女の子が、もしかしたらわたしも知っている子が、
不意に立っているのではないかと。
わたしの知らないところで、世界が動き出すのではないかと。

ずっとずっと、憧れて、焦がれて、恐れていた。

思い悩んで、苦悩して、そして。
叶わないと思っていた恋が叶って、わたしは今このポジションにいる。
幸せで、愛しくて、ほんの少し、怖くて。
永遠なんてないことを、わたしは知っている。
お伽噺の魔法は、現実世界では解けてしまうのだから。
あっけないほど簡単に世界が終わることを、わたしは知っている。
人の気持ちほど移ろいやすいものはなく、
そして人の気持ちほど変わりにくいものはない、と。
遠い未来、もしくはこの1時間後にでも、「終わり」はやってくるかもしれない。
薄い氷の上を歩くような心地でいることを、きっと彼は知らない。
伝える気もないから、おそらくずっと、知らないまま。
けれど、彼はそれでいいと思う。
知ってしまえばきっと怒って、そして哀しむだろうから。

彼には気づかれないようにほんの少しだけ自嘲して、
わたしはまたアイスの雫を舐め取った。
こんな風に、
わたしたちの関係がいつか解けて消えてしまう日が来るかもしれないと、恐れながら。



叶ったはずの恋なのに、わたしはまだ、憧れて、焦がれて、恐れている。
そして、その恐れすらいとおしいと思う程、わたしは彼に執着しているのだ。

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